何事もなかったように朝は来た。
だが、可愛らしい素敵な白いお店の玄関扉が開き、優しい笑顔で「櫻井さん、こんにちは」と出迎えてくれる白いエプロン姿の彼女に会うことはもうできない。
開店前、閉店間近の僅かな時間を使って、お店の前から見える十勝岳や夕陽をInstagramにアップしていた彼女の写真を、もう見ることはできない。
信念と強い拘りの詰まったとても美味しい彼女の作ったお菓子を、もう食べることができない。
数日前にも、お店に行き、お菓子を買い、いつものように少しお話をした。普通にいつものように、何も変わらなかった。
お店を出るとき、いつも入口のポーチの段差で転ばないよう見守ってくれている彼女の視線を背中に感じていた。
この日もそうだった。
その2日後、彼女が旅立ってしまうなど、全く想像もしていなかった。
シュカブラがオープンしたのは2020年10月、彼女のお店がオープンしたのは、その3週間ほど前だった。
同じ時期に同じ美瑛町内で開業したこともあり、月に2・3回は通い、お菓子を買いがてら、お互いの個人事業や、この町の将来のことなどを話した。
彼女の言葉は、いつも優しいトーンで発せられるが、強い信念を感じられるものであった。
考えが一致するときには、2人でうんうんと頷き、そうでないときには「櫻井さん、それはそうではないと思います」と、目を見開きはっきりと言ってくれた彼女。
ほんの数日前、普通にいつものように交わした言葉、これが最後になるなんて。
まだ、信じられない。町のどこかでばったりと出会いそう、お店に行けば優しい笑顔で出迎えてくれそう。
やはり信じられない。
まだまだ、自分の思いを自慢のカヌレに詰め込み、何千人、何万人と沢山の方に届けてほしかった。
43歳、あまりにも早すぎる。
彼女のご冥福を祈る。
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