冬の勧め
青い池は凍る。凍ってその上に雪が積もるから、冬は青い水面は見えない。 冬に美瑛に来ようとする方から、「雪景色の丘」や「青い池」を見たいと言われることがある。 「青い池は夜のライトアップしか楽しめないと思いますよ。昼間は真っ白ですから」と返すと、「えっ、何故ですか?」と、ほぼ全ての人がそういった反応だ。 「水ですからねぇ、毎日氷点下が続き、冷え込むときはマイナス20℃になりますからね。」と返す。 青い池の上流にある「白ひげの滝」は一部が凍っているものの、下を流れる美瑛川の青い水が見えて綺麗だ。そもそも、青い池は、十勝岳が噴火した際に美瑛川に沿って流れてくる泥流を食い止めるために築かれた堰堤に偶然に川の水が溜まったもの。堰堤は、泥流から農地や街を守るためのものだ。 冬の日中は短い。 年末年始あたりにシュカブラに1泊して、宿からの夕景が見たいと聞かれることがよくある。 「冬至の頃は日没が15:30頃で、チェックインできるのは16:00からですから、1泊ではシュカブラからの夕景は厳しいですねぇ。天気に恵まれれば、朝は少し遅めに起きても朝焼けが見られると思いますよ。日の出が7:30頃ですので。特に冬は、日中が短いので連泊がお勧めですよ。」と返す。 夏至の頃は、日の入りが19:00頃、日の出が4:00頃と、高緯度であるため季節による差が大きい。 東京や大阪は北緯35°ぐらい、美瑛が北緯43°ぐらい、地球は太陽の周りを公転していが、その公転面に対して、23.4°地軸の傾きがあるため、緯度が高くなればなるほど、季節による差が大きい、というか、その傾きが季節を作り出しているということである。 北緯66.6°以上の北極圏に行けば、その差が歴然となり、白夜や極夜という現象がみられる。そういうこと。 でも冬が大好きだ。真っ白な丘は最高に美しい。快晴の満月の夜に、月明かりで見る雪原も幻想的だ。 美瑛は「丘のまち」と呼ばれ、その景観が独特で有名だ。 明治時代に様々な事情により内地から渡ってきた人々が、この地で生きていくために森の木を伐り、伐根して農地へと変えていった。 冬、その広大な農地には雪が積もり真っ白な丘になるのである。森のままでは、そうはならない。夏のパッチワークのような模様もそうであるが、冬の雪原も農業という人の営みから生まれた風景である。 冬は野菜が採れない。 2月に美瑛に行って、北海道産の美味しい野菜が食べたいと聞かれることがある。 「ジャガイモと玉葱がメインですね」と返す。 ほうれん草など1月中旬までハウス栽培している一部の野菜はあるが、基本的には冬は野菜が採れない。寒さと雪で作物は育たない。 葉物やトマトは採れないが、ジャガイモが最高においしい。8月の新ジャガは、ホクホクしているが、夏や秋に収穫し冬の間に寝かされ熟成したジャガイモの甘さは格別だ。 ジャガイモと玉葱ときたら、人参と肉を足して、必然とメニュー決まる。 暗くなる17時頃から、宿でのんびりとスローペースで料理するのも悪くない。 美瑛はリゾート地ではない。農業を基幹産業とする町である。 人々が日常を送る町。 この地の風土を感じながら、暮らすように泊まってほしい。









