People

Go Sakurai

1970年大阪府に生まれ、三重県で育つ。

『なぜ、安定した公務員をやめ、宿を始めたか』と問われることが、よくある。
1997年、旅行で初めて来た北海道の雄大さに心を奪われ、足繁く通い2000年に三重県四日市から旭川に移住。移住したときは、まだ「美瑛」という地を知らなかった。
移住後、友人〔今は妻(旭川出身)となった〕に案内された美瑛の丘、「日本にこんなところがあったのか、テレビで見たことがあるヨーロッパの田舎町のようだ」と驚く。
北海道に住み20年以上経ったが、その間にはいろいろな発見があった。
日本全国どこに住んでいてもそうなのかもしれないが、その土地で生まれ育つと気付けない良さが潜んでいるものである。
私の実家のある四日市には袋小路のような狭い路地が沢山あり、庭先にミカンがなっている光景がある。私にとっては見慣れた風景、道産子である妻はこれを見て感嘆の声を上げる。
ダイヤモンドダスト、道産子にとっては、綺麗であるが見慣れたもの。私にとっては、いつまで経っても心躍る素晴らしい風景。
夏、巨大なトラクターが丘をゆっくりと走る、冬は一面の銀世界、「ただの畑だ」と地元の人はいう。私にとっては、人の営みと自然が織りなす感動の風景である。
大好きな美瑛に住み、まだまだ沢山ある自分が感じたこの地の素晴らしさを多くの人に伝えるため、それを感じてもらえるよう少しだけのサポートをしたい。
ただそれだけ。

日々の暮らし

2018年、脊髄梗塞という大病を患い一度は一生車椅子生活を宣告される。周りの方々に助けられながら懸命のリハビリの甲斐あり歩行可能に。下半身に障害が残ったものの「今、この地で自分ができることを精一杯愉しむ、多くの人に移住者の感性で感じた北海道の素晴らしさを伝える」を信念に、お客様の対応のほか、風景写真の撮影、ヴィラ敷地内の花畑づくりや草刈、倉庫造り、薪割、除雪などslowでありながら忙しい暮らしを妻や2人の子供・2匹の猫と楽しんでいる。

スロウ日和

2020年12月1日:「スロウ」のWeb版『スロウ日和』に掲載してくださいました。

美しい美瑛の丘をいつまでも

20年以上前、私が美瑛を訪れたときは、見たことのないような丘の曲線と広大な風景に感動し、ただ「美しい」と感じたものだった。その頃は、観光客もそれほど多くない時代だった。
美瑛に通い、ここに住み始め、少し変化してきた思いがある。
都会の人は、美瑛の丘を見て「大自然」ということがある。大自然というと「手つかずの自然」をイメージする。例えば知床や釧路湿原のほとんど人の手が入っていない自然だ。美瑛の風景はそうだろうか。そうではないと思う。美瑛の丘、それは、ほぼ全てが農地や植林である。つまり、人の営みから生まれた風景、一次産業である農業や林業からできた景色である。それが十勝岳連峰や大雪山など自然の物と調和して、独特の美しさを作り出しているのである。そう、私たちが「美しい」と感じるこの風景は、農家の方々の営みから生まれた風景なのだ。
120年以上前、様々な事情で本州・四国・九州の地を追われ、厳しいこの北の大地に入植し、熊やオオカミに襲われながらも、牛や馬たちとともに未開拓だったこの土地を切り開き、自分たちが生活していくために食料を作ってきたこの風景が、たまたまここを訪れる人にとって美しいと感じるのだ。
丘の上にポツンと立つ木、それは、一緒に働いた馬や牛の墓であったり、隣人との土地の境界であったり、開拓の証であったり、防風林であったり、決して観光目的に立てられたものではない。

近年、この美しさが有名になり観光客が押し寄せ、それに伴い、美瑛では大きな問題となっていることがある。
観光客の農地への侵入だ。靴の裏には作物にとっての病気・害虫などがついていることがあり、これが蔓延すると壊滅的な被害を受けることがある。
また、農地は、農家さんの庭のようなもの、私有地である。農地への侵入は、都市部や住宅地でいうと他人が無断で自宅敷地内に入って来て、写真を撮ったり、花壇を踏み荒らしたり、庭仕事をしている姿を勝手に撮影したりするようなもの。
北海道の農地はとてつもなく広く、都会の人にとっては見たこともないこの風景に吸い込まれ、思わず立ち入ってしまいたくなる気持ちも分からなくもないが、絶対にしてはいけないこと。
北海道に来て、美瑛に来て、美しい風景を見ることができ、美味しい野菜やチーズ、肉などを食べられる、また、全国各地で北海道産の農産物が美味しくいただけるのも、農家さんの営みがあってこそだ。農地に侵入し荒らすことにより、この風景や作物は失われていく。

旅行者の皆さんには、北海道・美瑛に来て、「農家さんに美しい庭を見せていただいている、写真を撮らせていただいている、美味しい食べ物をありがとう」という気持ち、このことを感じ理解していただけたら幸いです。

写真家の故・前田真三氏の言葉がある。1970年代、初めて美瑛を訪れた故人は「今の日本にこの丘ほどの風景が存在するであろうか。人それぞれの心にそれぞれの旅があるように、この丘はいつまでも私の心の一頁として残しておきたいと考えている。」と書いている。
日本のここにしかないこの風景を皆さんと一緒に残していきたい。
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初めて北海道を旅する方へ

北海道は広い・・・とは知ってはいるが。
さて、どのくらい広いのか?
普段の生活から感覚的に分かるように説明します。
北海道の面積は、関東地方の2倍、近畿地方の2倍、九州の3倍です。
美瑛と札幌の距離は東京と軽井沢、美瑛と函館の距離は東京と京都と同じくらいです。
初めて北海道を旅する人に「あそこもここも行きたい、あれもこれも食べたい」と欲張り、2泊3日で端から端まで旅しようとする方がよくいます。
私も初めて北海道を訪れたときはそうでした。釧路湿原、知床、大雪山、登別、札幌、小樽と欲張り、ほとんど車で走っているような状態。その当時は冊子の道路地図、よく見ると北海道だけ他の地域と縮尺が違う。走って、観光スポットをチラ見して、宿に着いて寝る。その地域の風土など感じられないとてつもなくハードな旅でした。
3泊ぐらいの旅ならば、どうしても行きたいところを中心にその近郊をゆっくり見て回ることをお勧めします。
また、冬は雪の影響で、高速道路が通行止めに、鉄道が運休になることも多々あります。冬、美瑛や富良野を旅行のメインとされるのでしたら、新千歳空港よりも就航率の高い旭川空港がお勧めです。東京近郊以外の方も、羽田乗り継ぎで旭川空港が安全です。美瑛や旭川の天気が良好でも、札幌や新千歳方面が猛吹雪になっていることがあります。中には、荒天で帰宅できないことを口実にラッキーと旅行期間を延ばされる方もいらっしゃいますが・・・。
では、気を付けて北の大地へ。