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ソバの刈り取り

午前9時、事務室で仕事をしていると『ゴーッ』という音がする。 『始まったな』 蕎麦の刈り取り作業である。 この時期、朝、快晴の日は放射冷却で10℃近くまで冷えることがあり、夜露がソバの実に付くため、ある程度太陽が昇り、気温が上がり乾燥してから刈り取り作業をするのだと思う。 大型コンバイン(超大型ではない)が3台、シュカブラの前の広大なソバ畑をバリカンで刈るように綺麗にソバを刈り取っていく。 刈り取った直後は、緑色の茎が表に現れコンバインのキャタピラの後が縞々になって畑に残っていく光景が何とも綺麗だ。この茎は、数日すると朱色に変わり、畑一面が秋色になる。 コンバインの運転手さんは、刈り残しが無いよう、また、無駄な時間をかけないよう、真剣な表情で作業を進めていく。 宿泊棟や管理棟の窓からは、目の前を横切る大きなコンバインが見え、圧倒されそうな感覚だ。 以前に比べ、美瑛はソバを栽培する農家さんが増え、それに伴いソバ畑も増えた。 その裏には、農業者の高齢化や人手不足という問題がある。 美瑛の有名なパッチワーク模様は、小麦・ジャガイモ・ビート・大豆の4種類を輪作(毎年作物を変えること)する昔からやっていた農業者の営みによって生み出された光景だ。なぜ、輪作するか。同じものを毎年作ると連作障害(病気など)が発生する可能性が高いため、違う作物を作るのであるが、蕎麦はその必要がない。また、ソバは防除(農薬散布)が殆ど必要ないと言われ、、シュカブラの前のソバ畑でも農薬を撒いているのを見たことがない。ソバは、ある程度の農薬散布が必要な小麦などに比べ手間がかからず、比較的痩せた土地でも育ちやすいのである。このため、人手不足に対応しやすい作物であるとのこと。 美瑛でも美味しい蕎麦が食べられるお店がある。もちろん、シュカブラの前の畑で育った蕎麦を食べられるお店もあり、このお店では、とても美味しい蕎麦が食べられるが、あまり知られていなく穴場だ。沢山の人に知られてしまい混雑することがないよう、シュカブラに泊まられた方に、こっそり教えることにしている。 そろそろ自分の頭の髪の毛も伸びてきた。今夜、超小型コンバインで刈ることにしよう。

2024-09-04T18:43:20+09:002024.09.04|

謎の小包が届く

先日、女性3名の連名で小包が届いた。 「誰なの、この人たち? お客さんで、こんな名前の人たちは覚えがないけど」と妻が少し困った顔で言う。 別に変な焦りはなかったが、差出人の名前を見ても覚えがない。 名前から読み取るに、年の頃は60歳代前後のようで、住所を見ると東京都八王子市となっている。 誤って配達されたものかもしれないし、もしかすると開けた瞬間、「ドカン!」なんてことも怖いため、開けるに開けられない。 住所と年代、そして最近の自分の行動を遡り、記憶を蘇らせる。 『あっ、たぶんあの時の人たちだ』と思い当たる節があった。 『きっとそうだ』と心を決め、包み紙を開けた。 中には、私より少しばかり年齢が上だと思われる女性3人と私が一緒に写っている写真、そして手紙、お菓子が入っていた。 この3名の女性、2か月ほど前に僕が敷地入口付近を草刈りしているときに前の道路を徒歩で通りかかり、「北西の丘展望台」と「ケンとメリーの木」までの道を尋ねてきた人たちだ。 道順を教え、その場は見送ったものの、それなりの距離があることと、夕立と雷が来そうなので心配になり、草刈りを終わらせた後、様子を見に北西の丘まで車を走らせたのだ。 途中、道端を歩く3人を見かけたため話を聞くと、レストランでの夕食の時間の関係でケンとメリーの木を近くで見る時間は無く、そのまま歩いてレストランに向かうとのことであった。 「草刈も終わったし、良かったら少し車で丘を案内しますよ」と誘うと喜んで乗ってくれた。美瑛の丘の歴史などを色々話しながら、ケンとメリーの木やセブンスターの木を観光客があまり見ない角度から見て、写真を撮り、40分ぐらいドライブしてからレストランまで送った。 女性一人やカップルには変な人だと思われるため声を掛けないが、ときどきやってしまう、家の前を通りかかった同年代の人に声を掛けることを。 話が好きということもあるが、折角、美瑛を旅しているのだから、少しでも深くこの地を知ってほしいという思いから出てしまう行動だ。 明日も草刈りをしながら、食虫植物のように前を通りかかる話し相手を待つことにしよう。 妻には、新手のナンパだと言われる。

2024-08-15T21:22:38+09:002024.08.15|

田舎暮らしはのんびりしていない

シュカブラの土地は、自宅兼管理棟も含め6反ある。「反」と言ってもイメージが湧かないと思うが、約1800坪(6400㎡)だ。1800坪と言ってもイメージできなければ、地域によって違うが一般的な住宅街の一区画が約50~70坪であることから想像してほしい。つまりは、とても広いということ。ちょうど長方形で間口64m×奥行100mである。 「広くてゆったりとのんびり過ごせていいなぁ」と思うだろう。 そんなに甘くはない。 この土地を購入した時は、「冬の除雪が大変だろうな」とは思ったが、雪を捨てるところは沢山あるため、除雪はトラクターにスノーブロアという雪を飛ばす機械を付けたものと除雪機を使えば、必要なところを除雪するのは2時間程度で終了する。また、美瑛は12月初旬から雪が積もり始め、ピーク時でも1m程であるため、毎日除雪をするということもない。むしろ、敷地がそれほど広くない住宅街の方が、大型機械が使えないため手作業になり、捨て場もなく、隣家の敷地の前に捨てようものなら、ご近所トラブルが発生する(雪国では多い話)から大変だ。 では、何が想像していた以上に大変かというと、草刈りだ。5月初旬には草刈が必要になり始めるが、これが10月中旬頃まで続く。6月~9月は雨が降って晴れると、一気に草が伸びるのである。1800坪を1日で一気に済ませるのは不可能。1日2・3時間程度作業し3日間で終わらせるが、天候によりできない場合もあり、3日目に終了したと思ったら、初日に刈ったところは、もう結構伸びている。ということで、この時期、雨の日以外は毎日草刈りという具合だ。 作業としては、刈払機や自走式草刈機、鎌を使うが、特に刈払機の操作では、小石を跳ねて建物のガラスなどを割らないように慎重に行う。 作業中には、草に隠れていたスズメバチが飛び出して来たりと、ヒヤヒヤすることも多い。 うちの宿の田舎暮らし体験メニューとして、薪割やトラクター運転体験もあるが、草刈り体験も追加した方が良いだろうか。綺麗に1反刈ってくれたら、ワイン1本をサービスとか。 ときどき、のんびり田舎暮らししたい(移住)などの話を直接や役場の移住相談窓口を通して聞くこともある。田舎暮らしはお勧めするが、やることが山ほどあり、のんびりとはしていないと思う。ただ、その忙しさを楽しく思えるかどうかも移住するか否かの大きなポイントだ。

2024-08-12T16:37:32+09:002024.07.31|

美瑛マジックにかかる

この時期、ラベンダーを見たいと富良野のファーム富田に行きたいというお客さんが多い。多いということは、当然そこは混雑するということ。 先日、お客さんに前情報を伝えるため、ファーム富田に電話し混雑状況を聞いた。 「やっぱり混雑してますか?」 「そうですね、沢山の方にいらしていただいています」 「駐車場に入るまでも渋滞していますよね」 「いいえ、停滞しています」 「そうですよね」 「外国の方が多いと聞きますが」 「はい、9割ぐらい外国の方だと思います」 とこのような感じだ。 美瑛・富良野では北海道の雄大な景色を見ながら静かに過ごしたいと思って来る方が殆どだと思うが、特に花が好きだというような人を除き、花を見ているのか人を見ているのか分からないところへ無理して立ち寄らなくても良いのではと思う。 この時期、麦の穂が実りジャガイモの花が咲く広大な美瑛の丘を普通にドライブしているだけで、とてもリフレッシュできる思う。 とてつもなく広い畑の向こうに見えるのは、トラクターと軽トラだけというような静かで見晴らしの良いところもあり、そんなところで深呼吸してほしい。 先日、以前シュカブラに泊まられたお客さんに用事がありLINEした。 彼女は厳冬期にいらしたのであるが、4日間で冬の真っ白な丘を10時間以上、一緒にドライブし、雪の日や晴の日、ダイヤモンドダストや満天の星空に大満足だった。 LINEのやり取りの中に「次回は櫻井さんのお勧めしない8月に行きます」と書かれていたが、まあ自分は秋や冬の方が好きなので、その季節をお勧めしているが、グリーンシーズンも決して悪くはなく農業景観は素晴らしいし、夏はなんといっても野菜が美味しい。ただ、折角都会から来るのだから人混みで酷い所謂観光スポットは、なるべく避けるか混雑する時間を外した方が良いなぁと思うのである。 LINEにはもう一つ、「また、櫻井さんマジックで楽しみたい」と書かれていた。 丘案内や自然現象の情報提供などを喜んでくれたのだと思っており、とても嬉しいのだが、決して特別なサプライズをしたわけではなく、彼女が感じたマジックとは、自然と調和し暮らす人々が築き上げた美瑛という地そのものと、それを受け入れた彼女自身の心ではないだろうか。僕はそれが少しでも感じられるよう、ほんの少しのサポートをしただけであり、それが、僕が宿をやる理由である。

2024-07-23T19:26:41+09:002024.07.14|

おばあちゃん、おかえり

『おばあちゃん、おかえり』 僕は、心の中でそう呟いた。 先日、2022年12月17日のブログに登場する関西弁で話すご高齢のお母様と娘さんのお二人がシュカブラを再訪してくれた。 本当なら前回の来訪から1年後の昨年12月に来られる予定で予約もいただいていたのであるが、お母様が体調を崩されたとのことで、来ることができなかった。 娘さんのお仕事の都合上、12月にお休みが取りやすいとのことであったため、今度お会いできるのは、前回から2年後の今年の12月になるのかな。お母様は大丈夫なのだろうかと心配していた。 今回の宿泊のご予約時のメッセージには、お母様の体調が回復されてこと、美瑛に行きたくて冬まで待てないことが書かれていた。 メッセージを見て安心し、6月になるのを楽しみに待っていた。 お母様は前回より少し足が悪くなられたようであったが、お元気そうである。 入室するとヴィラの土間に置かれた椅子に腰かけ、窓から外を眺め、「わー! 緑が凄いなぁ。あれなんやろ?」と目の前に一面に広がった広大な畑を見て問われる。「蕎麦ですよ。最近、芽を出し始め黄緑色が綺麗ですね」と答えると、「初めて見たわ」と変わらぬ関西弁でお話された。 大阪で生まれ、三重で育った僕にとっては、おばあちゃんの発する関西弁の一言ひと言が前回と変わらずとても心地よい。 6月も終盤になり、予想通り美瑛・富良野の観光客が増え、「ファーム富田」や「青い池」などの有名観光スポットは混雑し、時間帯によっては駐車場に入るための渋滞も起こっているとのこと。 一部の心無い観光客は農地に侵入し、農家さんが大切に育てている作物を踏み荒らしていることがあるようだ。 また、よく見かけるのは、危険な箇所への駐停車だ。美瑛はうねうねと丘が続くため、そこを通る道路には坂やカーブが多い。坂の頂上や見通しの悪いカーブに駐停車されてしまうと、対向車が見えず正面衝突の可能性もあり、大変危険だ。実際に、夏は救急車のサイレンを聞く回数が増える。 また、最近、電動キックボードのレンタルも始まったようである。やはり、自転車に比べ道の真ん中をフラフラ運転する人を見かける。 地元民の生活のため、また、観光客も事故なく楽しく旅ができるよう、お互い心がけたい。

2024-06-29T23:06:28+09:002024.06.29|

旅の感動をお手伝い

秋まき小麦には穂が付き、すくすくと成長している。ジャガイモやトウモロコシ、ビート、蕎麦なども徐々に成長し、今の美瑛の丘は、1年のうちで一番緑の多い時期かもしれない。 先日、改めて気付かされたことがある。 観光に来られた方が、所謂有名(撮影)スポットを巡っても、地元民が同じ場所に向かうのとは見え方が違うということ。 チェックインの際、お勧めスポットをお知らせし、翌朝、車で巡られたようであるが、その感想を聞いてみると想像していたものより感動が少ないように感じた。少し道にも迷われたようであった。 美瑛は広大な農地の間を道路が走っており、目印になる物があまりないため、道にも迷いやすく、特に内緒のスポットなどは看板もなく目的地にたどり着いたのかどうかも分からないこともある。 再度、人が少ない穴場スポットに挑戦してみたいとのことであったが、もしよろしければと、夕方、こちらの車で、丘を案内することになった。 改めて、朝は何処に立ち寄られたかを確認したが、穴場スポットの他、取りこぼしなく良さそうなポイントを巡られている。 ただ、スポットに向かうまでの経由した道が違うようだ。 お客さんと一緒に、宿をスタート、「ここを通りましたか?」「ここで曲がりましたか?」と聞くと、コースが違うことが分かった。 ナビを使うと一般的に最短コース(稀に変な道)を案内し、スポットに行くにはその道が一番早いが、自分が目的地に向かう際には、最短コースに拘らず、途中、綺麗な景色が見えるところを周るようにしている。ここのところは、なかなか地元民じゃないと分からないところである。 夕食のレストランにお送りする1時間程度と短い時間ではあったが、お客さんの反応は上々、「ここから見るのか。角度によって見え方が全然違ってすばらしい」「満喫した」「きれい」などなど。 ご夫婦やカップルなど、お二人の大切な時間を邪魔しようとは思わないが、丘の案内など、地元民として旅の感動をお手伝いができることに喜びを感じるのである。 宿の周りの畑は、そばの小さな芽が出始め、成長の勢いは早く、毎朝、目覚める度に緑が多くなっている。 7月には白い小さな花で覆いつくされるだろう。

2024-06-14T09:31:24+09:002024.06.14|

夕焼けの季節到来

5月・6月は企業や団体の総会が多く開催される時期である。 僕も宿泊事業者の一人として、観光協会など美瑛町内のいくつかの団体に所属している。 総会に参加すると運営側(事務局)から昨年度事業の報告と本年度の事業計画が説明されるが、殆どの参加者は質問や意見を発言しない。皆が、全く同じ考えを持っていることはない。説明を聞いて、何にも思わない人はいないだろう。 もちろん、時間的に参加者全員が発言できるわけではないが、参加するからには、賛同でも批判、別の提案でも良い、何か一言発言してほしいと思うのである。 まあ、僕は余計な一言を言ってしまうことも時々あるが。 さて、硬い話はこれぐらいにして、夕方、西の空が焼けることが多くなる季節がやってきた。 多くの人は、夕陽と夕焼けを混同している。これまでに、何回も書いているが、「夕焼けは日没後にやって来る」。 夕日も良いが、是非、夕焼けを見てほしい。 快晴の日には西の空がグラデーションになることがあるが、焼けやすいのは薄曇りや多めに雲が浮いている日だ。 夕焼けスポットでは、カップルなどが夕陽を眺めている姿をよく目にする。日の入りの少し前から、赤みを帯びた太陽が地平線に徐々に近づき、ゆっくり沈んでいくのをジッと見つめている。そして、太陽が沈み切った瞬間、多くの人が『あー綺麗だった』『沈んじゃった』というような顔をして、これから起こるかもしれない夕焼けを見ないで車に乗り込み帰ってしまうのである。 夕焼けは、地平線の下から太陽が空や雲を照らすことで起こることが多い。 そう、「夕焼けは日没後にやって来る」のである。 焼けるか焼けないかは様々な気象条件に影響されるが、日没後、最低でも30分は粘りたい。 因みに朝焼けも同じ状況で起こるので、焼けるのは日の出前だ。日の出1時間前辺りから色付き始めることが多い。 今の季節、綺麗な夕景の時間帯と夕食の時間が重なる。 夕ご飯を外食にしてしまうと、どうしてもシュカブラからの夕景が見られなくなってしまうから、オードブルやピザなどをテイクアウトして、宿の窓から、宿の庭から夕景を見てゆっくり過ごすのがお勧めだ。 美瑛は天気予報が当たりづらく、晴・曇・雨も外れることが多い。夕焼けになるか否かはそれ以上に予想しづらい。 今日も一日、空の変化を見ながら、ドキドキして過ごすこととしよう。

2024-05-31T08:41:35+09:002024.05.31|

種まき開始

シュカブラは、広大な農地に囲まれている。毎年、その畑では作物として蕎麦が作られている。 今年も本格的に畑起こしと播種が始まった。 部屋からは、目の前を人の身長をはるかに超える巨大なタイヤのトラクターが行きかうのを見ることができる。 トラクターを運転操作している農家さんは真剣な表情で前方と後方を何度も確認しながら、うねうねの丘を綺麗に起こしていく。 十勝のような平坦な土地ではなく丘が連なる美瑛は、トラクターの操作がとても難しい。横に傾きながら真っすぐに畑を起こすのは、豊富な経験と技術が必要だ。 シュカブラの庭にも800坪ぐらいの範囲にアンジェリアなどの花の種を撒く。庭を放置しておくと、たちまち雑草だらけになるからだ。 土起こし、種まきのタイミングは、気温や雨の予報を見ながら思案するのだが、天気予報を見て自分なりに判断するよりも、周りの農家さんの作業の様子を見ながら、それに足並みを合わせて作業を進める方が確実だ。 美瑛は天気予報が当たりづらいからか、農家さんの経験則の方が上回る。 自分で判断して種まきした年は、撒く時期が早すぎて、寒さで成長しなかったりしたが、農家さんの真似をして時期を定めると、綺麗な花をつけてくれる。 庭の畑起こしはトラクターで行うが、種まきは手作業。近所の農家さんが昔使っていたという種まきの道具を借り、ゆっくりゆっくり種を撒く。 丁寧にまんべんなく撒いたつもりでも、実際花が咲いてみると、密集したところや薄いところができていて、近所の農家さんには「ふふふ」と笑われる。 やはりプロにはかなわない。 6月中旬にはシュカブラの庭はアンジェリアの薄紫の花が咲き乱れ、7月にはシュカブラの周りの何ヘクタールもの広大な農地は、白い小さな蕎麦の花で埋め尽くされるだろう。 シュカブラの庭に立つ白樺の木陰から、十勝岳連峰をバックに一面の白い蕎麦畑を見られる日が来るのが待ち遠しい。

2024-05-31T08:42:15+09:002024.05.16|

春の美瑛

5月になった。GWの真っただ中、美瑛の桜は今が満開だ。 とはいっても、最低気温は0℃近くになることもある。 広大な農地の秋まき小麦は、雪解けとともにぐんぐん成長し、濃い緑の絨毯のようだ。徐々に樹々は芽吹き始め、新緑を覗かせている。 この時期に困ったことがある。白樺の花粉によるアレルギーだ。 薪割や草刈などの作業をしていると、目は痒いし、鼻が詰まる。 本州にいた頃は、スギやヒノキの花粉には全く反応しなかったが、北海道に移住して5年ぐらいたったころから、この時期になるとこのような症状が出る。 白樺というと、本州の人には人気の木で、僕も白い幹を見るのは好きだ。 ただ実は、道産子にはあまりにも普通に生えている木で、特に好きだという人はあまりいない。それどころか農家さんの多くは、畑の脇などに生え、成長も早く、トラクターでの作業の邪魔になるため迷惑な木だという。 でも、この時期の白樺は、小さな芽を出し、それが日に日に開き始め、黄緑色の綺麗な葉を沢山付ける。この薄い黄緑色と真っ白な幹は、ずーっと見ていても飽きない。 故・前田真三氏の写真ギャラリー「拓真館」の敷地にある白樺の回廊を歩くのは良い。美しい写真を見て、鼻がムズムズしながらでも回廊を歩き、同じ敷地内にあるSSAWというカフェで一息つく。 6月中旬から8月の美瑛は、花畑を見ようと沢山の観光客が押し寄せ、有名スポットは人だらけ車だらけになる。花畑はあくまでも観光客向けに造られたもの、本来の美瑛の姿ではないと思う。農家さんが農作物を作る過程で出来るパッチワークのような農業景観が本来の美瑛である。5月は人が少なく、そんなの美瑛を静かに見ることの出来るお勧めの季節だ。 折角、都会から来るなら、人混みでごった返す時期ではなく、静かな時期に来てほしいと思うのである。

2024-05-01T20:49:50+09:002024.05.01|

旅から生まれるもの

3月25日に出発した旅を終え、4月8日に美瑛に帰ってきた。 苫小牧港から仙台に寄港し、名古屋港から上陸。鳥取県の智頭町や米子市、京都府の伊根町、大阪市、亀岡市、京都市、大津市、津市、四日市市から琵琶湖の横をすり抜け、日本海側に出て、新潟市まで北上、東北地方を横切り仙台港から苫小牧港へ、車での走行距離は2,700㎞。 途中、一時的に家族(妻・長男・次男)と合流したが、ほぼ一人旅だった。 旅の目的の一つは、米子に住む102歳になる父方の祖母に会うこと。祖母は足腰が弱って歩行器での移動だが、相変わらず頭の回転は速かった。 もう一つの目的は、オーバーツーリズムの現状視察であるが、一つが伊根町。 こちらは、京都府の北部、日本海側にある町である。近くには、昔から観応地として有名な天橋立がある。 伊根は漁師町で湾に面する海岸の際に270件の舟屋が立ち並び、日本の原風景が残る場所である。 数年前までは天橋立などに比べ、それほど観光客も訪れない場所であったが、この風景が有名になり、近年、特に外国人観光客が急増したようである。伊根町の人口は2,000人程度であるが、そこに年間何十万人という人が訪れている。それとともに、私有地への立ち入りや、駐車場の問題などが発生して、伊根町観光協会のHPを覗くと「伊根は観光地ではありません」と謳っている始末である。観光協会の人に話を聞いたが、皆さんには伊根に来て楽しんでいただきたいが、一部のマナーの悪い人たちのせいで、住民が安心して暮らせないことと、善良な観光客にも悪影響があるなどのことから、このように言わざるを得ないとこのことで、大変苦慮されている様子が伺えた。 丁度、桜の開花時期で日中は車や人が多く、また、私有地への立ち入りなどマナー違反も見受けられた。 田舎でこのような状況というところが、美瑛の状況と類似している。ただ、美瑛の方が、より深刻な状況であるように感じた。 その他、大学生の頃に住んでいた大阪や京都、また、20代の頃勤めていた三重県庁にも立ち寄った。何か人生をなぞっているような不思議な感覚になってきた部分があった。 旅をすると発見できるものがある。特に長期での一人旅はそうである。 今の仕事も27歳のときに初めて北海道に訪れたことがきっかけだ。宿をやるという夢を持ち、それを達成した。 今回の旅で見つけたこと。それは、60歳で自伝的小説を書くことだ。2歳年下の従妹が作家をしており3年前に自伝的小説を書いてそれなりの反響があった。そのせいで、懇意にしていた新聞社とは関係が断絶するというマイナスもあったようであるが、僕が書いたところで大した影響はなく、ましてや読んでくれる人も近親者だけかもしれない。 ただ、人生を振り返り、自分の気持ちを整理するという意味では、良いのではないだろうか。それを書くことにより、人生の終盤に向けた新たな目標が見つかるかもしれない。 旅先では、これまでシュカブラに来てくれた方の住む町やその近くを通ると、「元気ですか」と声を掛けたくなった。旅行中、毎日2回程度、インスタのストーリーズに旅の様子を投稿していたが、何人かそういった方からメッセージをいただくことがあり、旅をさらに楽しいものにしてくれた。タイミングが合えば、お茶でもしたい。 この場を借りて、メッセージへのお礼を申し上げる。ありがとう。 帰ってから4日経った。4月16日までは休業中であるが、夏に向けた準備を急ピッチで進めている。トラクターやチェーンソー・草刈機の整備、薪の移動などなど、山ほどある。1日に1回は写真を撮る。やはり、美瑛の景色を撮ると心が落ち着く。 この時期、シベリアに帰るため、一時的に美瑛に滞在する白鳥などの渡り鳥がシュカブラ上空を行きかう姿を見ながら、仕事と趣味の区別がないようなことを、一つひとつこなしていくこととしよう。

2024-04-12T09:40:02+09:002024.04.12|
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