君に幸せあれ
今年の美瑛は雪解けが早く、道路だけではなく丘の畑の雪もなくなりかけている。 シベリアから本州などの南にわたる途中の白鳥も飛来し始め、シュカブラ上空を飛び、鳴き声や、低空飛行するときには羽音までも聞こえる。 さて、前回の続きで、長男が一人暮らしのため、家を出ていく件である。 高校を卒業したら、家を出て行くように言っていた張本人の僕が、出て行く日が近づくにつれ、寂しさが増していくような状況だ。 同世代の友達に聞くと、子供が出て行くと心にぽっかり穴が開いたようになるという。 はたして4月になり、いなくなった状況に耐えられるのか不安がつのる。 思い返せば、もっと色んなことをしてやればよかった、もう少し優しくしてやればよかった、など後悔しか頭に浮かばない。 長男は都会ではない地方都市にある国立大学と都会の私立大学に合格したのだが、自分に足りないものは、沢山の人と接し経験を積むことだと、都会にある私立大学を選択した。 国立と私立の授業料の差は、本人が奨学金を借り、就職してから返済するという覚悟を決めての選択だ。 僕が18歳の頃、若くして数百万円の債務を負うことなど、このような重大な決断はできなかった。 なんとなく合格した大学に行き、大学時代もなんとなく過ごしていたような気がする。 18年間、親らしいことは大してしてやれなかったが、知らないうちに強い意志を持った青年になっていた。これが、後悔だらけの子育ての中にある唯一の救いだ。 親から離れ生活すると、親から教えられたことが、正しかったと思うこともあれば、間違っていたのではないかと思うこともあり、徐々に価値観も変わってくるだろう。 この先4年間、都会の中で揉まれ、大きく成長した長男を見るのが楽しみだ。 目立たなくてもいい、自分が幸せだと思える人生を歩んでほしい。 「君に幸せあれ」