先週末、2年ぶりに飛行機に乗った。
東京で開催された北海道移住交流フェアに美瑛町がブースを構え、そこに役場職員とともに参加した。自分の役目としては、三重県からの移住者である体験を、移住を検討している人や移住に興味を持っている人たちに話すことであった。
近年、「移住」という言葉を耳にする機会が増えたが、移住とは明確な定義がない。
時々、「私は〇〇から移住しました」という話を聞くことがあるが、よくよく状況を聞くと、『それはただの引っ越しでしょ」と感じてしまうことも少なくない。
例えば、美瑛町でいうと、隣町の東神楽町や旭川市から転居してきた方が、「移住してきた」と言うことがある。内容を聞くと職は変わらず、ただ単にマイホームを美瑛町内に建てたり、アパートを町内に借りたり、町内の企業に就職したり、町内の人と結婚したりで、ただ、自治体の境界線を跨いだだけであることも多い。
自分の感覚としては、それは「引越し」である。
「移住」とは、これまでの生活スタイルを大きく変えようと考え、変化させるための項目の一つとして、自らの意思で風土の違った場所に移り住むことだと思うのである。
移住を検討している人は、現状に満足が得られず、何かの変化を求めているのであると思う。
今回の移住相談対応で感じたことは、役場の職員が説明する移住に関する支援制度の説明も大切であるが、その前に、その人の置かれた状況とどのような変化を求めているかを聞き取り、可能な範囲でそれを分析し、そのうえで、その人に合ったアドバイスをすることが重要であると思う。
ただ、分析をするには道産子(北海道で生まれ育った人)とは違った、相談者と近い感性を持っていなければならないと思う。そのためにも、道外から移住した自分たちのような人間が、役場の職員と一緒にフェアに参加することで、より相手の立場に立った寄り添った対応をすることが可能になるのではないかと思う。
今回、自分がフェアに参加することをInstagramに投稿した。これまでにも、移住に興味を持っている何組かの方がシュカブラに泊まられ、その中にはいつも投稿を閲覧してくれている方もいるからだ。そんな方が来場してくれると嬉しいなと思っていたところ、昨年、シュカブラを利用された女性が来てくれた。
彼女に「あら、移住を検討中?」と聞くと、「櫻井さんに会いたくて」と言われた。役場の職員も隣にいる中で、ストレートに「会いたくて」と言われたことが、顔から火が出るほど照れくさく、思わず少しはぐらかしてしまったが、とても嬉しかった。
移住相談の場であるためフェアが終わった後、連れて行ってくれたおでん屋さんで近況などをお話しした。短い時間ではあったが、自分にとってはとても楽しい時間であった。
お酒が入って、調子に乗っていつものように一方的に喋ってしまって、少し失礼なことを言ってしまったかもしれないが。
シュカブラは、貸別荘のようなスタイルの宿である。ただ、建物やインテリア、庭をはじめ全ての「物」や、清掃や草刈り・除雪などの「事」に自分たちの魂を吹き込むようにしている、というかしてしまう。
それを深く感じてくれた人は、宿泊客とオーナーという関係を超えて、友人のような存在になる場合もある。
仕事とは、想いを形に変えて相手に伝えること。いかに共感を得られるかだと思う。
それが、自分の拘り。
それにしても、2泊した上野駅前は治安の悪い所だった。
深夜でも頻繁にパトカーと救急車のサイレンの音が聞こえ、朝食がてら散歩した駅前の歩道には、二日とも流血の痕跡があった。
最後の日に、上野公園のベンチに腰かけていると、おじさんが寄ってきて、「今日、仕事あるよ」と声をかけられた。
東京に来るからいつもより少しお洒落にしてきたつもりだったが、普段の作業着のような服装と変わらないような格好に見え、また、持っていた安っぽいスーツケースが、リストラされたホームレスのおじさんに見えたのかもしれない。
「足が不自由ですけど、宿を廃業したら使ってください」と言っておいた。
旭川空港に降り立ち、迎えに来てくれた妻に出来事を話したが、あまりに数多い刺激的な出来事に話が止まらず、自宅に戻ってからも、料理や洗濯をする妻の後ろを付きまとい話続け、翌朝からもネタが収まらなかった。
妻の顔には「いい加減静かにしろ、鬱陶しい」と書いてあるように見えた。
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