もう少しで氷点下になるような寒い朝。本格的になってきた美瑛の秋。
快晴の朝は、放射冷却で冷え込み霧が発生することが多い。その霧は緩やかな風に乗って富良野方面から美瑛に流れ込んでくる。
朝4時半、まだ太陽は昇っていないが、薄明るい窓の外にはもやもやしたものが丘を漂うのが少しだけ見える。朝霧だ。
この朝霧、薄い場合は宿から漂う様子が見られるが、濃い場合は小高い丘の上に立つシュカブラも飲み込み窓の外は真っ白だ。
この後だんだんと濃くなり飲み込まれるだろうと予測し、美瑛の丘で一番高い場所である五稜地区まで車を走らせた。
日の出までは、あと10分程。想像以上に濃い霧は雲海となって、ゆっくり南から北へ移動している。
日の出の時刻、まだ、太陽は雲海の向こう側。この後何が起こるか知らない人は日の出が見られないのならと、クライマックスを見ないでここを去ってしまうのである。
ゆっくり流れる雲の端が明るくなり始め、光芒が放射状に隙間から漏れる。そして雲の上全体を照らし始め、金色の海が現れる。ただこの金色は長くは続かない。15分程度であろうか。次第に白い雲へと変化していく。
午前8時頃、太陽が雲を溶かすように雲海は消え、雲の下に隠れていた丘のパッチワーク模様が姿を現す。
天気予報で翌日が快晴の場合、朝目覚め窓の外が真っ白の霧に覆われた場合は要注意だ。ここで諦めず、宿から車で10分足らずの高い丘に行けば雲海が見られる可能性が高い。霧が薄めの場合は、シュカブラの窓から眺めるのが良い。木枠の大きな窓から眺める朝霧の丘は移ろう絵画そのものだ。