美瑛の丘は、緑の部分が多くなってきた。昨年秋に種が蒔かれた小麦などだ。秋に芽を出し3~5cm程度になる頃、雪が降り積もりそのまま越冬する。春、積もった雪が溶けると一気に緑が濃くなり、ぐんぐん成長する。

春になってから、苗を植える作物もある。ジャガイモ、てんさい糖、トウモロコシなどである。雪の下に眠っていた広大な農地は、土が締まって硬くなっている。これをトラクターで起こすのであるが、この作業が大変だ。先ずは荒めにお越し、トラクターの後ろにつける機械を替え、起こした土をフカフカになるよう細かく砕いていく。そして、苗や種芋を植えていく。とてつもなく大きなトラクターで作業をするが、北海道の農地は桁違いに広いため、農家さんは何日もかけて所有している農地を順番に耕していく。丘の模様は起こされた畑と小麦の緑の絨毯で、まさにパッチワークだ。

冬の間の美瑛は、野菜が殆どとれない。今でこそ、ハウスものが少し出回るが、昔はジャガイモなどの根菜類を雪の下で貯蔵したり、白菜や大根を漬物にして、冬場の野菜不足をしのいだ。今でもメジャーな保存方法だが、やはり春を迎えてからのとれたての野菜は瑞々しくおいしい。ゴールデンウィーク明けから露地ものアスパラがとれだし、トマトや葉物野菜も次々と出回る。農家さんの家の前では、規格外としてはじかれた野菜たちが「こんな安くていいの」とこちらが心配になるぐらいの値段で売っている。味は最高。丘をドライブしがてら、真っ赤なトマトを買い、眺めのいい場所に車を停め、パッチワークを眺めながらトマトを頬張る。本州に出荷するトマトは赤く熟す前に収穫する。到着したころに赤くなるように。だから、赤く熟れたトマトは出荷できず、地元の市場や農家さんの前で売られている。赤くなるまで枝にぶら下がっていたトマトは最高に美味しい。ここでしか食べられない美味しさだ。

いよいよ活気に満ち溢れた季節がやってくる。