僕はクールな人間なのか?
『ホームページやブログの写真や文章から、櫻井さんはクール人だと想像していた』と旅行を終え帰宅された女性からのお礼のメッセージの中に、そんなことが書かれていた。
意外な言葉であった。ストイックな奴だと言われたことはあるが、『クール』だと言われたのは、人生でおそらく2回目だ。正確にいうと1回目はクールではなく『冷たい人』と言われたような気がするが。
身近な人は、僕のことを熱く、また、かなり拘りが強く頑固だと言う。

彼女は、お母さんともうすぐ2歳になるお子さんと3人で3泊された。オープンした直後の3年前ぐらいにインスタでシュカブラを見つけ、それから、ブログやインスタの投稿を頻繁に見てくれていたようで、彼女に自分の身の上話や美瑛の出来事を話すと、多くのことを知っていたのである。
『えっ、なんで僕のそんなことまで知ってるの???』と思うことも多くあったが、記憶を辿ると確かに過去にブログに書いた覚えがある。
こんなにまで、隅々まで読んでくれている人はなかなかいない。感激である。

彼女は美瑛に来て、シュカブラに泊まるということの他に、青空や星空をバックにクリスマスツリーの木やセブンスターの木の横の白樺並木などを撮影するほか、ダイヤモンドダストなどの稀に見られる自然現象を見たいとのことで、旅行前からLINEでやり取りし相談に乗っていた。だが、如何せん晴れや星空などは天気次第、僕にはどうしようのないことで、彼女には、どんな天気でも楽しめるようニュートラルな気持ちで来てほしいと話していた。

到着された日、旭川空港にお迎えに行ったが、空も真っ白で、やや吹雪ぎみだ。彼女やお母さんが「空も地面も真っ白っていうのも綺麗ですね」との言葉に少しほっとした。
でも、彼女はやはり青空と星が見たいんだろうなと思いながら、『少しでも晴れ間が覗いてくれたら』と願った。

ときどき日が差し込み青空が見えるが、何となくすっきりしない天気で3日目の夜を迎えた。20時頃は星など全くと言っていいほど見えない曇空である。23時頃になり、雲の切れ間から少しだけ星が見えだした。ダメもとで星を見に行くかと彼女に問うと、「行きたい」との返事が。一か八か行ってみるかと思い、真っ暗な丘を車で走る。よく僕が撮影するセブンスターの木の横の白樺並木が見えるところに着いた。
ほんの10分前、ほとんど雲に覆われていた空は澄み渡り、満天の星空が目の前に広がっていた。
何か所かの撮影ポイントを巡り、最後はクリスマスツリーの木。時刻は午前1時半、静まり返った暗闇、華やかな冬の星座をバックに佇む一本の木。聞こえるのは、キュッキュッという雪を踏みしめる音だけ。気温は氷点下18℃、痛くなる指先でシャッターを切った。

翌朝(その日の朝)、旅行の最終日、氷点下22℃快晴である。いつのも橋の上に行くと、高い確率でダイヤモンドダストが見られるの気象条件が揃っている。
『予定通り、出発する』と彼女にLINEし7時半頃、橋の上に到着。
川霧立つ中、朝日に向かってじっと待つ。キラキラとダイヤモンドダストが少しずつ見えだし、徐々に濃くなると、小さめであるがサンピラーも現れた。
彼女の勝ち、彼女の執念。1シーズンで何回も見られない現象が起こっている。感動する彼女の眼は少し潤んでいるように見えた。(寒さで涙が出たのかもしれないが)

「あれが見たい、こんな写真を撮りたい、撮り直して」と遠慮なく言ってくれる彼女は、僕と親子ほど年が離れている。僕には娘はいないが、娘がいたらこんな感じなのかと、不思議な気分の4日間であった。
彼女とは16時間ほど一緒に昼夜の丘をドライブしながら話をしたが、たぶん僕のことをイメージしていた『クール』とは程遠い人間だと感じたのではないだろうか。
どちらかというと、『北の国から』の黒板五郎のようなホットな人間だと、自分では思っている。