今年の美瑛は雨が少ないようだ。本州で雨が多い年は、北海道では少ないような気がする。一昨年の干ばつを思い出させる6月だったが、やっと末日にまともな雨が降った。
観光客にとっては、晴れた日の方が良いのであろうが、美瑛の丘に住む者、特に農家さんにとっては、雨が降らないと死活問題だ。
シュカブラの前には広大なソバ畑が広がっているが、種が蒔かれ、芽を出してから雨が降らず、少し元気がないように見えた。そこに先日の恵みの雨が降った。すごいもので、窓から見える蕎麦の様子が、2時間前と全く違う。苦しそうな顔から、躍動感あふれる活き活きとした顔に変わるように、茎や葉がピンとする。
雨の後は、草木に付いた砂ぼこりが流れ落とされ、艶やかになる。だから、雨も嫌いではない。

美瑛の丘は、ジャガイモの花が満開に近い時期を迎えた。キタアカリ、レッドムーン、男爵、インカノメザメなど、様々な品種のジャガイモの花が咲く。白い花や薄紫の花。農作物で彩られる丘の風景、これこそが、本来の美瑛の姿である。
この後、ジャガイモは花が終わり、葉や茎が枯れ、7月下旬から8月に収穫される。新じゃがのホクホクした食感を楽しむ時期である。

観光客向けに整備された赤や紫、黄色やオレンジの色とりどりの花畑も綺麗だとは思うが、あくまでも観光客向けのもの。
本来の美瑛の風土を感じてもらうには、農作物が見せる素晴らしい景観を静かにそっと見てほしい。
そして、食するときは、生産者が手塩にかけ、あの丘で育った野菜だと感じながら食べてほしい。美瑛にいる時も、都会に帰ってからも。