丘にも紅葉が降りてきた。美瑛は紅葉の最盛期に入りつつある。シラカバ、ミズナラ、ナナカマド、ニレ、クルミ、カエデなど、樹種もさまざまであるが、水辺や日向・日陰の違いによっても色付く時期が様々だ。

この時期は、早朝に濃い霧が出ることが多い。上空が晴れて放射冷却で地表が冷えるためである。朝、窓の外は10m先が見えないこともある。こういったときは、かえって絶景を見るチャンスだ。このことを知らない人は、「あぁ・・・」と思い二度寝してしまう。霧が徐々に晴れてくる何とも言えない幻想的で素晴らしい瞬間を見逃してしまうのである。
濃い霧が南から北へ目の前の丘を流れ、だんだん薄くなり切れ間から鮮やかな樹々がチラチラと見え隠れする。正面から太陽が丘を照らす。逆光の明と暗の世界。大きな窓から注ぎ込む朝日は、次第に室内を温め暖房が不要になるどころか少し暑いぐらいだ。ウッドデッキ側の小窓とベッド上の窓を開けると、冷たい風が部屋を通り抜ける。外の空気を感じながらの朝のコーヒー。ただ、窓の外を見ながらぼーっと過ごす時間。旅行に出ると、あれもこれも見たい、あれもこれも食べたいと欲張ってしまうことが多いが、何もしない時間を楽しむのも良いものではないかと思う。

この日は、十勝岳連峰を覆う分厚い雲でスタートした。ここで、がっかりするのは早い。この後、やって来る素晴らしい景色を待つ。朝食の準備をしながら、キッチンから窓の外を除く。『来たっ!』光のカーテンだ。雲の切れ間から漏れた太陽の光が丘に降り注ぐ。庭から見るのも良いが、木枠の窓を通して見るのも、動く絵画を見ているようで良いものである。

11月初旬まで、美瑛の丘が最も美しく鮮やかになる季節、私が一番ドキドキする季節。